磁粉探傷試験(MT)は、鉄鋼などの強磁性体に磁束を流し、きずから表面へ漏れ出す磁界(漏洩磁束)に磁粉を吸着させて、表面および表面直下のきずを目に見える模様として捉える検査法です。漏洩磁束に磁粉が「吸着」して指示模様を作るのが原理であり、磁粉がきずの中に入り込むわけではありません。この一点を取り違えると、原理問題はまず落とします。
レベル2は、現場で自ら探傷を組み立て、結果を判定できる技術者を認定する区分です。具体的には、対象材料に応じた磁化方法と磁化方向を選び、連続法・残留法や湿式・乾式を適切に使い分け、得られた磁粉模様を規格の許容基準に照らして合否判定し、記録・脱磁まで一連の手順を完結できることが求められます。手順書の作成や最終的な総合判定はレベル3の役割であり、レベル2は「与えられた手順に従って現場の実務を正しく回し、レベル1を指導できること」が中心だと押さえておくと、出題の意図が読みやすくなります。
なお、受験区分や合格基準、引用される規格条文の細かな番号は変更されることがあります。本記事は学習の道筋を示すものですので、出願要件や合格ラインの数値は一般社団法人 日本非破壊検査協会など公式情報で必ず確認してください。
過去問を分解すると、出題は次のテーマ群に集約されます。原理の一本の筋(磁束はきずに直角なほど漏れる)から枝分かれしていることを意識すると、暗記量が一気に減ります。論点ごとにバラバラに覚えるのではなく、「この知識は原理のどこから来ているのか」を毎回たどる癖をつけてください。
MTが使えるのは磁束を流せる強磁性体(鉄鋼など)に限られます。アルミ・銅・一般的なオーステナイト系ステンレスは非磁性で原理が成立せず適用できません。ただし「ステンレスは一律で不可」ではなく、マルテンサイト系など強磁性を示す系には適用できる点も押さえておくと、引っかけに強くなります。検出できるのは表面と表面直下(ごく浅い表層)まで。深部のきずはUTやRTの担当です。「金属なら何でも可」「内部深くまで見える」は典型的な誤りです。
磁束に直角なきずほど漏洩磁束が大きく、最もよく検出できます。逆に磁束と平行なきずはほとんど漏れず、見逃します。だからこそ、1方向だけの磁化では平行きずを取りこぼすため、向きを変えて直交する複数方向で磁化する(あるいは複合磁化を使う)必要があります。「磁束⊥きず」の一原則を持っておけば、向き系の問題はほぼ解けます。複合磁化は2方向の磁界を組み合わせ、一度の操作で多方向のきずを狙える方式だと整理しておきましょう。
主な磁化方法と特徴は次の通りです。試験体に電流を流すか流さないか、できる磁界が周方向か軸方向かで仕分けると混乱しません。
なお「浸透法」は浸透探傷(PT)の用語であり、MTの磁化方法ではありません。科目をまたいだ用語ダミーに注意してください。
違いは磁粉を適用するタイミングだけです。連続法は磁化電流を流している間に磁粉を適用し、磁界が強い状態で模様を形成させるため高感度で標準的。残留法は磁化を止めた後、材料に残った残留磁気で磁粉を集める方法で、焼入れ鋼や高炭素鋼のように保磁力(残留磁気を消すのに必要な逆向き磁界の大きさ)が大きい材料に向きます。軟鋼はすぐ磁気が抜けるため残留法には不向きです。残留法では短時間の大電流(衝撃電流)で十分に磁化してから電流を切る、という手順もあわせて覚えておくと、手順系の出題に対応できます。
湿式は磁粉を水系・油系の検査液(キャリア)に分散させて適用し微細きずに有利、乾式は粉のまま散布し高温面や粗面・大型品の局部に有利です。湿式では検査液の磁粉濃度を沈殿管(一定時間静置して沈んだ磁粉の量を読む器具)で定量管理する点もよく問われます。蛍光磁粉は暗所で紫外線(ブラックライト)を当て、規定のUV照度のもとで観察すると高コントラストで微小きずまで見えます。非蛍光磁粉は明所の白色光で観察し、黒色磁粉を白色コントラストペイントの下地に乗せると見やすくなります。このとき下地は薄く均一に塗るのが鉄則で、厚塗りは漏洩磁束と磁粉の動きを妨げて感度を落とします。観察条件の入れ替え(蛍光なのに白色光、など)は定番のひっかけです。
交流は表皮効果で磁束が表面に集中するため表面開口きずに強く、直流(整流電流)は磁束がやや内部まで分布するため表面直下のきずも比較的捉えやすい、という対比で覚えます。狙う深さで使い分けるのが実務であり、「直流は表面に集中」「交流が深部に最適」は向きが逆です。なお半波・全波整流の脈流は磁粉を動かしやすく、乾式での指示形成を助けることがある、といった枝葉も対比表の中に置いておくと取りこぼしが減ります。
検査後、残留磁気が後工程(切粉の吸着、溶接アークの偏向=磁気吹き、精密計器の誤差)に悪影響する場合は脱磁します。脱磁は交流の振幅を徐々に絞る、または直流の極性を反転させながら漸減させ、磁界をゆっくりゼロへ近づけるのが本質です。一気に強い逆磁界をかけるのは再磁化のもとで、「徐々に」が核心だと押さえてください。効果は磁気(ガウス)メータで規定値以下かを数値確認します。探傷前には標準試験片(A形など)を試験面に置き、有効磁界と感度・磁化方向の適否が出ているかを確認するのも必須の管理です。
正答の知識があっても、選択肢の作り方に引っかかると失点します。現場感覚で言えば、次のパターンは毎回のように顔を出します。
MTレベル2は範囲が広く見えますが、論点同士が原理でつながっているため、丸暗記より「原理→派生」の理解が効きます。私が受験者に勧める順序は次の通りです。
仕上げに、MTと他手法の役割分担(表面はMT、内部はUTやRTで補完、非磁性材の表面きずはPT)を一枚で整理しておくと、総合問題や手法選択の問題に取りこぼしなく対応できます。合否判定は磁粉模様の種類・長さを読み、適用規格や仕様の許容基準に照らして決める、という評価の手順まで言えるようにしておけば、知識問題から判定問題まで一続きでつながります。
MTレベル2の攻略は、「強磁性体の表面・表層を、漏洩磁束に磁粉を吸着させて高感度かつ簡便に検出する」という一文に立ち返ることに尽きます。磁束はきずに直角なほど漏れるという原理を軸に、磁化方法・電流の種類・連続法と残留法・観察条件・脱磁を対比で理解し、過去問で誤答の理由まで説明できるようにすれば、ひっかけにも崩れません。試験制度や合格基準、引用規格の細部は公式情報で確認しつつ、原理理解と演習の反復で着実に得点を積み上げてください。
磁束はきずに直角なほど漏れて検出しやすいという原理です。これを図で理解しておくと、磁化方向や磁化方法を問う問題の大半が同じ考え方で解けます。原理を後回しにして用語だけ暗記すると、選択肢のひっかけに弱くなります。
違いは磁粉を適用するタイミングだけです。磁化電流を流している間に磁粉をかけるのが連続法(高感度・標準)、磁化を止めた後の残留磁気で集めるのが残留法です。残留法は焼入れ鋼など保磁力の大きい材料に向き、軟鋼には不向きと合わせて押さえます。
試験体の端部・角・急な断面変化では磁束が乱れて漏れやすく、きずが無くても磁粉が集まる磁極指示(疑似指示)が出るためです。加工痕や材質境界も原因になります。模様の位置が形状と一致しないかをまず照合し、真のき裂(鋭く明瞭な線状)と区別するのが現場の手順です。
これらの数値や条文は改定されることがあるため、本記事では断定していません。最新の受験区分・合格基準・引用規格は、一般社団法人 日本非破壊検査協会など公式の情報で必ず確認してください。学習自体は原理理解と過去問反復で進めるのが効率的です。