超音波探傷試験(UT)は、材料の中に超音波を送り込み、戻ってくるエコー(反射波)からきずの有無・位置・大きさを読み取る検査方法です。レベル2は、決められた手順書に従って自分で探傷を組み立て、エコーを評価し、結果を記録できることが求められる段階だと考えてよいでしょう。あわせてレベル1の作業を指導する立場でもあります。
ここでよく境界線が問われます。手順書そのものを作成する役割はレベル3であり、レベル2はあくまで「手順に沿って探傷・評価・記録する+下位者を指導する」範囲です。この役割分担を入れ替えた選択肢は定番のひっかけなので、最初に押さえておきましょう。
つまりこの試験は、暗記量よりも「原理を理解した上でエコーを正しく解釈し、装置を適切に校正できるか」を見ています。原理・装置・技術評価・記録という4つの柱をバランスよく固めることが合格への近道です。なお、受験資格や合格基準などの制度面は変更されることがあるため、最新情報は一般社団法人 日本非破壊検査協会など公式の案内で必ず確認してください。
過去問を解いていると、出題テーマはおおむね次のかたまりに集約されます。丸暗記ではなく「なぜそうなるか」をセットで理解しておくと、初見の言い回しでも崩れません。
波長λは λ=c÷f(c:音速、f:周波数)で決まります。周波数を上げると波長が短くなり、小さなきずを検出しやすくなります。波は自分の波長より小さいものを素通りしやすいからです。深さ位置の測定精度も、パルスが時間的に短い高周波の方が有利です。ただし高周波ほど減衰が大きく、厚物や粗粒材では奥まで届きません。「小さいきず=高周波/遠く・厚物=低周波」という対で覚えるのが鉄則です。
探触子の振動子は面の各所から波を出すため、近くでは波どうしが干渉して音圧が乱れます。この乱れた区間が近距離音場で、その長さNはおおよそ N≒D²÷4λ(D:振動子径)。径が大きく波長が短い(高周波)ほどNは長くなります。一方、Nより先のビームの拡がり角はλ÷Dで効き、こちらも高周波・大径ほど鋭く絞れます。「振動子を小さくすると指向性が鋭くなる」「高周波ほどNが短い」はどちらも逆向きのひっかけです。スピーカーと同じで、口径が大きいほど音はまっすぐ飛ぶ、と直感で押さえると間違えません。
材料中の減衰は、主に内部摩擦で熱に変わる吸収減衰と、結晶粒の境界で波が散らされる散乱減衰からなります。結晶粒が粗いほど境界での散乱が強く、減衰は大きくなります。鋳鋼やオーステナイト系ステンレス溶接部が探傷しにくいのはこのためで、低めの周波数を選んで透過力を確保します。「反射減衰」「屈折減衰」といったもっともらしい造語が混ざる問題に注意してください。
境界面での反射の強さは、両側の音響インピーダンスZ(=密度×音速)の差で決まります。差が大きいほど強く反射し、鋼の裏が空気のときはほぼ全反射、水だと約94%まで下がります。だからこそ探触子と試験体の間の空気を追い出す接触媒質(カプラント)が不可欠で、空気層があると超音波はほとんど入りません。
同じ鋼でも、縦波は約5900 m/s、横波は約3230 m/sと、振動モードによって音速が変わります。斜めに入射すると境界で波が折れ曲がり、その角度はスネルの法則(sinθ1/c1=sinθ2/c2)で決まります。入射角を増やすと第一臨界角で屈折縦波が消え、第二臨界角までは横波だけが伝わります。斜角探触子はこの範囲を使って横波を生み出し、上面・底面で反射しながらジグザグ(スキップ)に進ませて溶接部を探傷します。底面まで直接届いた点が0.5スキップ、底面で1回反射して上面へ戻った点が1スキップで、板厚と屈折角から探傷できる範囲を設計します。
音の反射は鏡と同じで入射角=反射角です。ビームに垂直に正対した面状きずは反射波が探触子へまっすぐ戻るためエコーが高く、傾くと見落としやすくなります。割れのエコーが鋭く高い反面、探触子を少し振っただけで急減するのもこの性質によるものです。逆に垂直探傷が得意なのは、板面に平行に寝た面状きず(圧延起因のラミネーションなど)です。また振動子より小さく正対したきずなら、エコー高さはおおむね面積に比例します。向きが分からないきずに備えて、複数方向・必要なら両面から走査する考え方とセットで問われます。
6dB低下法は、最大エコー位置から探触子を動かしてエコーが半分(−6dB)になる位置をきずの端とみなし、その端から端までを指示長さとする手法です。これは横方向の「長さ」を測る方法。一方、きずの「高さ」を測るなら、上端・下端からの回折エコーの位置差を使う端部エコー法を用います。長さと高さで手法が違うことを必ず区別してください。指示長さは実寸と完全一致しない「指示」値である点も論点です。
同じ大きさのきずでも、遠いほどビームが広がり減衰してエコーは低くなります。これを補正するのがDAC(距離振幅特性)曲線で、実測で引く距離補正線です。これに対しDGS線図は、距離・ゲイン・等価きず寸法の関係を理論的に表した線図で、両者の違いはよく問われます。探傷感度は、標準試験片や対比試験片の基準反射源(斜角は横穴SDH、垂直は平底穴FBHが基本)のエコーを決めた高さに合わせて設定します。なお走査時は見落とし防止で感度を高め(探傷感度)、きず寸法の評価は基準感度に戻して行う2段構えが標準で、上げたまま評価すると過大評価になります。
時間軸(測定範囲)の調整は主にSTB-A1で行い、垂直探傷では小型のSTB-N1も使えます。A1感度はSTB-A1のR100円弧面のエコーを基準に設定します。装置性能では、入力が2倍なら表示も2倍になる縦軸の正直さ=増幅直線性が崩れるときず寸法の評価が歪みます。これは横軸(距離)の正直さである時間軸直線性と混同しないこと。ゼロ点調整は、くさび内の伝搬時間を差し引いて画面の零点を試験体表面に合わせる「時間軸の原点合わせ」で、感度合わせではありません。
過去問の誤答選択肢には、毎回のように同じ「型」が仕込まれています。原理が分かっていれば反射的に切れるものばかりなので、パターンとして頭に入れておきましょう。
レベル2では基本に加え、応用的な手法の特徴も問われます。深入りより「何で何を測るか」を一行で言える状態を目指します。
UTレベル2は範囲が広く見えますが、出題テーマは有限で、しかも論点ごとに「原理→なぜ問われるか→定番のひっかけ」という骨格が共通しています。次の手順が遠回りに見えて結局いちばん速いです。
検査の信頼性は、高性能な装置だけでなく、手順の標準化・装置校正・検査員の技量の3つで決まります。試験勉強も同じで、原理の理解(技量)・過去問という標準教材・繰り返しによる校正のかけ算だと考えると、力の入れどころが見えてきます。
UTレベル2は、原理を理解した上でエコーを正しく評価・記録できる力を測る試験です。波長と検出能のトレードオフ、ビームの形(近距離音場と指向性)、音響インピーダンスと反射、斜角探傷の角度設計、6dB低下法と端部エコー法の使い分け、DAC/DGSや直線性といった校正の論点を押さえれば、出題の大半はカバーできます。あとは因果の逆転・軸や用語の入れ替え・dB換算という定番のひっかけを過去問で体に覚えさせること。図で原理を理解し、間違えた問題を繰り返す地道な反復が、最短ルートです。制度や基準の数値は変わり得るので、最終確認は公式情報で行いましょう。
まず波長・周波数・減衰・反射といった基礎原理を図で理解し、その上で過去問をテーマ単位(波長系・校正系・寸法測定系など)に束ねて反復するのが効率的です。正解を選ぶだけでなく、誤答の理由まで一言で説明できるようにすると、本番のひっかけ対策になります。
6dB低下法は、最大エコーから−6dB(半分)になる位置をきずの端とみなして横方向の『指示長さ』を測る手法です。一方、端部エコー法はきずの上端・下端からの回折エコーの位置差を使い、きずの『高さ』を測る手法です。長さは6dB低下法、高さは端部エコー法、と役割が分かれている点が頻出の論点です。
斜角探傷では、どの屈折角からでもほぼ同条件で反射する横穴(SDH)を感度設定やDAC作成に使います。垂直探傷では、面積と理論エコー高さの関係が計算できる平底穴(FBH)を基準にし、DGS線図の等価きず径の基準にもします。『斜角=横穴/垂直=平底穴』の対応を入れ替える選択肢が定番のひっかけです。
合格基準・受験資格・規格の条文番号などの制度面は改定されることがあるため、本記事では断定していません。最新かつ正確な情報は、一般社団法人 日本非破壊検査協会など公式の案内で必ず確認してください。